【宣保愛甲編②】人を呪わば穴二つ
真夏の夜のマ軍―イ軍戦。
マ軍が正捕手に代打を送り、その裏の守りに第二捕手粟野が入ったタイミングで、イ軍ベンチは満を持して野球戦手兼自称霊能者の宣保愛甲を代打に投入。
「粟野の野郎が心霊ネタ苦手なのは分かってんだ。」
と、イ軍不二村監督はドヤ顔が止まらないものである。
果たして、
「うわぁ…。ホームベース上に霊がいる。ここにボール持ってきたら呪うって言ってるわぁ…」
と、ベンチの期待通り、粟野に向けて速攻で心霊囁きを連打する宣保愛甲。ホームベース上に向かって手を合わせて拝む動作まで入れる念の入れようであった。
「ちょ、止めてくれよ!」
急所である心霊ネタを持ち出され、あからさまに動揺する粟野。最初内角に構えたのだが、宣保愛甲の囁きから少しでも距離を取るべく、不自然な程外角に寄ってしまったものである。
「フッ、投手崩せないならまず捕手からってなあ」
宣保愛甲投入が鮮やかにハマり、イ軍不二村監督はほぼイキかけのヘヴン状態。
宣保の心霊煽りにビビった粟野が内角への配球が出来なくなったこの状況、外角球が得意な宣保がヒットを打つも良し、あるい敬遠気味のフォアボールになるもよし。どちらにしても、極めて高い確率での出塁が予測された。
かに見えたが、事態はとんでもない方向へ動き出した。
何と、どう考えてもストライクゾーンを外れている外角球を、球審佐村がストライク判定連発。宣保はなすすべもなく見逃し三振に倒れたのであった。
これに収まらないのがイ軍監督不二村である。
「おいこら! 何なんだ今の判定は!!!!」
光速で佐村に喰って掛かったのであるが、
「うるせえ! 全部霊のせいだ!!!!」
と、まさかの切り返し。
そう、心霊ネタが苦手なのは粟野だけではなかったのだ。
その後もホームベース上の霊(そんなもん居るワケないのだが)を避けるべく、外角球しか要求しない粟野と、それを全部ストライク判定する佐村のコンボで、イ軍は為す術もなく敗戦したのであった…。




