【城戸編99】ザ・デコイ
東京ドームでのバ軍―イ軍戦。
両チームのエースが先発し緊迫した投手戦となったこの試合、7回裏バ軍の攻撃で試合が動いた。
1死1塁の場面で、打者が左翼に飛球を打ち上げたのであるが、白い天井で1塁走者が打球を見失ってしまったのだ。その隙を、「球界最高の守備固め」として鳴らすイ軍遊撃手の草加部は見逃さなかった。球を持たない状態でエアダブルプレーの動作を見せたのだ。これに対し、普通の守備はザルもいいとこだが詐欺要素が絡むと別人のように機敏になる二塁手アームブリスターもよく反応し、エアダブルプレーのパントマイムが完成したのであった。
そのあまりのも出来のいいやらせっぷりに、一塁走者が引っ掛かってしまい、その必要がないのに二塁へスライディング。「やべぇッ!」と気付いた時にはあとの祭りで、本来ならホームへ到達出来たかもしれぬタイミングで、2塁止まりとなってしまったのであった。
と、思われたが、バ軍にとって幸い、そしてイ軍にとって不幸だったのが、この試合でイ軍の左翼に「スコアロスマシン」こと城戸が入っていた事であった。
打球が左翼に上がった事を確認しているにも関わらず、草加部-アームブリスターのデコイに見事に引っ掛かり、「ダブルプレー乙」とか言ってるその背後に打球がポトリ。結局城戸の未必のアシストでランニングホーマーとなり、草加部の機転も虚しくバ軍は2得点を挙げたのであった…。




