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お笑い野球イディオッツ!  作者: 山岡4郎
おいでよ最弱の闇
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【城戸編98】ミラージュ打法

 8月の終わり、その日は暑かった。

 記録的炎天下でバタバタと観客も熱中症で倒れまくったマ軍―イ軍戦。

 早く帰りたい、誰しもがそう思っている中で、試合は淡々と進んでいく。

 マ軍打線はイ軍先発「雷神」こと被本塁打癖に定評のある渡瀬に初回3ランを浴びせたものの、暑さでにやられて2回以降はまさかの無安打行進。イ軍打線の惨状はマ軍以上で、4回に草加部が適当に振ったバットから当たり損ないのヒットが出た、というだけの1安打のみで無得点。非常に早いペースで試合は進行していたのであった。

 さて、試合は9回裏1死、打席にイ軍の「ダブルプレーアーティスト(※打つ方)」の4番城戸である。ほぼ熱中症状態で意識は朦朧としていたものの、打率維持の為にも何とかヒット一本打っとこうと、無駄にファウルで粘る城戸。そんな城戸に、

「おーい、今日はもういいよ城戸さん」

「さっとダブってさっと帰りましょうや」

 と、イ軍ベンチからヤジが飛んだものである。

 それでも何球かカットした城戸であるが、遂に力尽きてお約束のショートゴロ。打球がショートから二塁、二塁から一塁へ転送され、晴れてゲッツー完成、ゲームセットとなったのであった。

 ――真に、イメージとは恐ろしいものである。

 この時は、審判、マ軍、イ軍、観客の誰もが、酷暑の影響で疲労困憊しており、グランドでとんでもない事態が発生していた事に気付かなかったのである。

 最後の城戸の打席、1死ではあったが、何とランナー不在だったのだ。城戸=併殺のイメージが球場の全員に擦り込まれていたのと、早く帰りたいという願いが一体となり、城戸がノーランナーで併殺を記録してしまうという、打った本人も全く気付かなかった恐るべき珍記録が発生してしまったのであった…。

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