【城戸編91】新・敗北の方程式
シーズン終盤、イ軍の不二村監督は遂に決断。大不振に陥り打線遮断機と化している4番城戸をスタメンから外したのである。
この事態に自分の不振を棚に上げて大激怒した城戸であるが、代打に廻ってからは驚異的な打棒を披露。得点圏でも打率稼ぎでセーフティバントを狙う姿勢は相変わらずなものの、勝負所の緊迫した場面で12打数12安打1ホーマー4打点と、それまでの城戸とはまるで別人のような打撃で意地を見せたのであった。
城戸自身の代打成功率もさる事ながら、4番に新鋭長森が入った事で城戸に分断されていたイ軍打線が活性化。4番が併殺マシンの城戸から三振マシンの長森にアップグレードした事で、チャンスで一度に取られるアウトが2個から1個になり、打線に繋がりが生まれ、得点効率が向上したのであった。
この打線活性化()を成し遂げた当たり采配に、しかし不二村監督は何とも言えぬ複雑な表情であった。
「城戸の野郎、今シーズン3割で終わる為には一打席も無駄に出来ねえからな。絶対打たなきゃならねえ状況じゃないと奴は本気出せねえんだよ。だからそういうお膳立てをしてやってんのさ。ただ、奴をスタメンから外すと俺が球団に罰金払わなくちゃいけねえんだよなあ。全く前のオーナーもとんでもない契約をしてくれたもんだ。勝つ為に仕方無いとはいえ、胃が痛えし神経擦り減っちまうよ全く…」
その後、城戸をスタメンから落とした打線は好調(と言ってもたかが知れているが)を維持したものの、その事で発生する罰金ストレスで不二村監督の勝負勘が鈍って継投失敗→結局敗戦という新たな敗北の方程式が確立したのであった。




