【イ軍編2500】偏屈系打者の心を溶かした最弱ナイン
自分が納得しないスイングだと、ホームラン打っても首を傾げて顰めっ面。そんな偏屈系打者のド軍蔵前が、同級生(38)が打撃コーチになった事による人間関係の軋轢から、遂にチームを自由契約。流れ流れて、最弱イ軍に拾われたものである。
移籍してしばらくは、前述のような気難しい系ムーヴが頻発していたのであるが、ある時を境に劇的に変身。ヒットを打った際は、塁上で満面の笑みを浮かべるようになったのであった。
「うーむ、ワイらの溢れ出るフレンドリーが、蔵前の頑なな心を知らんうちに溶かしてしまったんやろなあ」
「野球人たる前に社会人たれ。天国のノムさんもニッコリやで」
等々、相も変わらず勘違いに花が咲くイ軍戦犯系ベテランズであったが、廻り廻って彼奴等のお陰と言えぬでもないのであった。以下、現役引退後に自費出版した蔵前自伝より抜粋――。
「イ軍の時は色々と本当に大変だった。あまりにも負けまくるから八百長疑惑が凄かったが、内部にいた感想としては、純粋に弱過ぎただけ。ワイのスタンスとして、ヒットだろうがホムーランだろうが、納得いかない当たりだと無意味と思っとったが、イ軍で試合中にそれが顔に出ると、秒速で八百長容疑者になってしまう。ヒット打って仏頂面だと、ワザと凡退しようとした結果の八百長失敗じゃないんか? みたいな。それで不本意ながらああいう演技せざるを得んかったんや。なお社会人としては必要なスキルだったので、再就職には役立った模様(震え声)」




