【城戸編513】城戸二世と呼ばれた男に社会の厳しさを叩き込んだ主砲
最弱イ軍に高卒ドラフト2位で入団した、左打ちの巧打者式根。まだまだ経験不足ながら、流麗なスイングから広角に打ち分ける打撃フォームは、どことなく「40億の凡打製造機」ことイ軍の四番打者城戸の全盛期(汚いバント安打無しで首位打者)に似ていたものである。実際、式根のポジションは一塁で、球団としては城戸の10年契約が切れる3年後を見越した補強なのであった。そういった事情もあり、式根は「城戸二世」と呼ばれ、本人も「目標とする打者はダークサイドに堕ちる前の城戸さん」と公言するに至ったのである。
果たして迎えた春季キャンプ。式根は、「城戸さんの四番はワイに任せてどうぞ、の精神でやったりますよ。打撃で分からん事は城戸さんに訊きまくります」と意気込みを語ったのであるが、やはりというか何というか、そうはい神崎な展開が待っていたのであった。
「いや~草さん、これがプロの厳しさいうモンなんですね」
と、式根はチームのベテラン草加部にこぼしたものである。
「城戸さんに打撃のコツを訊いても、『マネー振り込んで来い』とか何とか言われて、教えてもらえんところまでは想定しとりました。しかし実際は質問する事すら出来んから、せめて見て盗もうと思ってたのに、結局ワイのおるところでは一回も打撃ケージに入っとらんですよ。高卒一年目のキッズが相手でも、自分のポジションを脅かす可能性がちょっとでもあれば、全力で警戒してくるんすね」
てな感じで何だかよく分からない感銘を受けている式根に、草加部は城戸ならではの真相を教えてあげるのであった。曰く、
「いやいや、ンなワケない、城戸は何も考えてないやで。たまたまキャンプ直前にモンハンの新作が出たから、昼夜問わずやり込んどるだけや。ユーが見とる前で打撃練習してないっていうか、多分今年は一回も球場に来とらんわ(震え声)。それでも消化試合の鬼ブーストでシーズン打率3割に乗せるんやから大したもんやが、一年のペース配分や力の入れ所が分からんうちは大惨事になるから、そういうプレースタイルは絶対に真似をしてはいかんのやで」




