ドル箱イ軍戦(※)
(※)ただし対戦チームに限る
一般的に、大不人気軍団、客受けしないチームとして認知されているイディオッツであるが、なかなかどうして、相手チームの興行担当者からは、意外に重宝されていた。彼らがビジターとして訪れた試合は、他チームの時と比較しても、観客の入りが良かったのである。
何故か。
理由は二つある。
まず、イディオッツに球界のヒール、嫌われ者が集中していた事。
実力の割に高額年俸かつ、態度の悪さも球界随一の主砲勢田。
ビッグマウスながら肝心な場面で勝負弱い、勝負所以外では最強打者の城戸。
不正投球疑惑で審判団から要注意人物としてマークされている神崎。
球界一底意地が悪いとされる、若手キラー(自チーム含む)の綿貫。
そして、彼らを率いる、勝利の為ならどんな手でも使うと公言して憚らない不二村監督。現役時代に、縁起試合(相手チーム選手の記録がかかった試合や、相手ホームでの優勝がかかった試合等々)を幾度もぶち壊した実績もあり、一部の野球ファンからは非常に嫌われていたものである。
そして理由の二つ目。
そんな絵に描いたようなやられ役のイ軍は、とことん弱かったのである。ここ数年、多少の波はあったが、大体は勝率4割以下のところをうろついており、悪くとも2勝1敗、チームの調子が良ければ3連勝を計算できる、安牌の対戦相手だったのである。
「絵に描いたような悪役相手の、勝つ可能性が高く安心して観戦出来る試合」となれば、観客が増えるのも道理であろう。特に、イ軍以外のBクラス常連球団では、数少ない勝てる相手として、観客動員増が顕著であったという。
球界の鼻つまみ者集団のイメージが強いイ軍であったが、ビジターチームにとっては観客動員増が見込めて、球界全体としては貢献度が高かったという話なのであった。




