※重複※ からの穴埋め
道玄坂の奥まった路地。小屋と形容しても無理がない木造の二階建てに、その店はあった。
“トントトトントン、トントン”
という、指定されたリズムでドアをノックすると、向こう側から開かれる。
「予約してる絹田です」
「4名様ですね。それでは座敷になりますので、二階にお上がり下さい」
入口のすぐ右に、急な階段があり、そこを登ると、外観からは想像が付かないほど広い空間が広がっていた。門構えこそ小さいが、どうやらかなりの奥行きのようだ。
「ウチは電気がありませんので…照明は、こちらの蝋燭になります。なくなりましたら、お声掛け下さい」
二本の蝋燭が、卓上をぼんやりと照らす。
「いやあ、ムーディーですねえ」
「しかし全然見えんぞこれじゃあ。料理の粗を隠す為なんじゃあないの」
「我々の加齢の粗も隠してくれてますがねw」
それからホタルイカの沖漬け、カニミソのキュウリ和えを食べたところまでは覚えているのだが…。料理は二品ともまずますのお味であった。アルコールのヨーグルトの水割りがよくなかったのであろうか…。
次に行った時は、店自体が無かった。閉店というレベルではなく、建物自体が無く、無機質な雑居ビルになっていたのである。この店を案内してくれた知人も同時に消息を絶っており、全ては闇に沈んでしまったのである…。




