【マウンドの詐欺師 神崎編⑮】挑発投法
野郎がまた何かイカサマしてやがる。
春先のイ軍―マ軍戦、イ軍先発「七色の違法投球」こと神崎のピッチングに、マ軍打線は完全に翻弄されていた。
どう見ても何の変哲もない半速球としょっぱい変化球しか投げていないと思えるのだが、キャッチャーミットはやたらと小気味よく「パシィーン!」と音を立て、球はかなりキレているのである。序盤こそ安打を集中して2点を奪ったものの、マ軍打線の中で感覚のズレが次第に広がっていき、神崎の棒球に凡退を重ねていくのであった。
また、神崎が試合開始直後から、散々ロジンバッグや帽子、ユニフォーム等、
「違法投球の元、触ってます」
と言わんばかりの挑発的動作を執拗に繰り返したものである。
「あの野郎、絶対何かやってやがる!」
と、監督以下首脳陣、選手全員いきり立ち、審判に執拗な抗議を展開。先述の挑発行為もあって、神崎が試合中に身体検査まで喰らう事態にまでなったのだが、結局何も出てこないのであった。
試合はそのまま神崎の完投勝ちで終了。
神崎は今日の試合の立役者である改造野球用具商人…いや、一番センターの外人リバースとハイタッチを交わしたのであった。
「おう、今日のキャッチャーミット使えるわあ。マ軍の奴ら、まさか『どんな糞球受けてもいい音が出る改造ミット』とは気づかずに、俺の方ばっかマークしてきやがんのな藁」




