【イ軍編24】トルネード打線
春季キャンプ終盤。
エア自主トレでなまりまくっていたイ軍野手陣であったが、ようやくウォームアップが終わったか、フリー打撃では快打を飛ばすようになっていた。
殊に、一体どうした事か、日を追ってフリー打撃での柵越えが増加しており、竹垣や草加部といった非力な打者までもが長打を連発しているのであった。
「ノー! コトシハマダモッテキテナイ!」
と、イ軍の闇商人リバースも、現段階での飛ぶバット&飛ぶボールの持ち込みを否定。ドーピングによる筋力増強が疑われたが、NPBの速攻抜き打ちテストの結果、アームブリスターが育毛剤で引っ掛かった以外は全てシロの結果であった。
「去年飛ぶバットで一年戦った事で飛ばすコツが身についたんじゃねえか」
「やっぱ飛距離出すには太らなきゃ駄目ってことなのかもな。信子(落合)はネ申」
「俺がこの効果を狙ってデブったって事にいつから気付いてた?(ドヤァ)」
等々、イ軍野手陣自身も理由は分からない状態なのであったが、とにもかくにも、気分良くフルスイングしまくってキャンプを締め括ったのであった。
一方その頃、イ軍球団社長桜田と「パネマジ広報」こと白井。
今日付けの新スポを眺めながら、桜田は満足そうに何度も頷いていたものである。
「社長、キャンプでの12球団柵越え数、ぶっちぎり一位おめでとうございます」
「うむ。大金を投じて毎日ちょっとずつ球場のフェンスを前に持ってきた甲斐があったというものだ」
「話題に乏しい我がチームですが、社長のご尽力でマスゴミの数も増えました。社長の緻密な距離計算で、マスゴミにも全くバレていないようです」
「フッ、これで選手に勢いをつけてマスゴミも呼び込み、シーズンでは旋風を巻き起こす。全ては私の狙い通りだよ白井部長」
ドヤ顔キメポーズで得々と語った桜田であったが、ある意味、確かに彼奴の言う通りにはなった。長打力がついたと勘違いしたイ軍野手陣はシーズンに入っても全員全球フルスイング。記録的ペースで三振を重ね、1番から9番まで全員大型扇風機と化すとんでもない事態に陥ったのである。
12球団柵越え数ナンバー1とかいう何の足しにもならない糞ネタの代償は、「トルネード打線」の蔑称と共に、シーズンのチーム三振世界記録更新という形で結実したのであった。




