【長森編】怒りのホームラン全力走
体が捩じ切れるかと見紛う全力フルスイングから放たれた打球は、弾丸ライナーとなってホームランテラス最前へ突き刺さった。
打った当人の長森は、目視確認しなかったのか? 俯いたまま塁間を全力走。本塁まで速度を緩めなかった事から、ホームランという認識はあったようだが――しかし、基本的には打つ事しか興味が無い長森に、ちゃんと打球の確認をしろというのは、いささか難しい注文であった。――いくら何でもそのぐらい、というのは、社会不適合レベルの一点集中型である長森を知らぬ者なら、無理からぬところだろう。
だが、今回に関しては、長森はチラ見ながらも打球の行方を見届けていた。それが故の、塁間全力走だったのである。
「――誰が打ってもホームランになるレベルのド失投に、私はフルスイングしたワケじゃないですか。その結果がテラスに助けられたギリムランですよ。ぶっちゃけ打ち損じもいいとこで、もう恥ずかしくて恥ずかしくて…。ネットじゃ絶対『テラスのおかげ』って叩かれまくるだろうし、実際その通りだし…。もう本当に自分が嫌で仕方なかったんで、一秒でも早くこの居心地の悪さから逃げたくて、全力で戻りました…」




