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お笑い野球イディオッツ!  作者: 山岡4郎
おいでよ最弱の闇
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ベンチ内乱闘

 打てば凡退、投げては炎上。

 東京新宿スタジアムでの私のイディオッツ初観戦試合。イディオッツは、5回途中にして早くも0-11と絶望的大差をつけられていた。

 特にイディオッツのファンというわけでもなく、友人の付き合いで来場した私としては、有名なスター選手や何本かのホームランが見られたので(両方とも対戦チームだが)、それなりに楽しめてはいたのだが、子供の頃からのファンだという友人は、さすがに気落ちした様子であった。

「ま、こんな負け方は慣れてるからさ」

 と言って、悔しさを押し殺している風である。

 何でも、本来であればイディオッツのエースピッチャーが投げる予定だったらしいのだが、直前で変更になり、急遽違う選手が先発したらしい。友人は、勝てそうな試合を選んで観戦するつもりだったというわけだ。

 それは辛いかもなあ…と、ぼんやりと考えていると、俄かにイディオッツのベンチが騒がしくなっていった。私たちはライト側の前方の席に座っていたのだが、ここまで聞こえてくるとは相当な音量である。まあ、観客が少ないからというのもあるのだろうが。

「おっ、始まったな」

 外野席のファンたちが、一方的に負けているこの試合で、初めて色めき立った。バックスクリーンのオーロラビジョンでベンチ内の様子が映し出され、中年男性が殴り合っている。

「よしいったれ! 二人とも共倒れしてくれや!!!!」

 友人の解説によれば、殴り合いを演じているのは、打撃コーチと投手コーチらしい。オーロラビジョンには、ご丁寧に『今日の敗戦(というかまだ負けていないのだがそう書いてあった)について激論を交わしていたらこうなってしまった』とある。

「すげえな。試合中にこんな事あるんだなあ」

 私が驚き半分、呆れ半分で呟くと、

「どうせヤラセだろ。この糞チームは試合で勝てねえから、こういうヤラセを打って客の興味を引くしかないんだよ」

 友人はオーロラビジョンを睨みつけながら半ばキレつつも教えてくれた。

 ファン心理とはそういうものなのであろうか。言われてみれば、わざわざスタンディングで両コーチの名を連呼しながら盛り上がっているイディオッツのファンたちも、どこか哀しげな表情をしているようにも…………………見えねえ。彼らは120%この状況を楽しんでいるようであった。

 コーチたちの死闘は5分程で終了しただろうか。片方のコーチが、泣きながらアッパーを繰り出している様子が印象に残った。

 …後日、ほどなくしてこのコーチは退団。その後日談もあって、私の野球初観戦は、プレー意外での出来事で非常に鮮烈な記憶となったのであった。

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