【城戸編81】禁断の打率維持技
イ軍投手陣がマ軍打線に頻繁に大炎上させられる事から、「新宿大虐殺」と異名を取るイ軍―マ軍戦であるが、本日の試合は奇跡的に1-2のロースコアで展開しているのであった。
とはいうものの、9回裏、イ軍の攻撃は2死無走者と絶対絶命の大ピンチ。更に、マウンドに立ちはだかるのは球界を代表する左の剛腕クローザー、佐伯である。
一番から始まる好打順のイ軍打線であったが、1、2番が連続三振に切って取られ、3番赤田もあっさりと2ストライクに追い込まれてしまった。
だが、絶対に最後の打者になるものかという赤田が、ウイニングショットの内角球へ踏み込んでスイングした事で、当たったか当たらないか、非常に微妙な状況を生んだのである――球審はやや迷った後、「バットにかすったからファール」の判定を下したのだ。
この判定に対して、両チームは凄まじい勢いで抗議開始。
赤田始めイ軍陣営は「体に当たってるからデッドボール」、佐伯始めマ軍陣営は「当たってないから三振ゲームセット」と、互いに一歩も譲らぬ大抗議合戦となったのであった。
そこに、一際猛烈な勢いで参戦したのが、イ軍の4番、「4億の凡打製造機」こと城戸である。そして、その抗議の内容に、両チーム及び審判は、唖然とする他なかったのであった。何と、城戸は赤田の三振を強烈に主張し始めたのである。
「おい赤田! みっともねえマネは止めろ! 往生際が悪いんだよコノヤロ! なあ球審の三村さん」
この言い草に赤田がマジ切れし、
「あんた何ワケの分からねえ事言ってやがんだ! いくら次の自分が佐伯を打てなくて打率下げちまうからって、そりゃねえだろう!!!!」
核心を突いた一言をズバリ。
判定への抗議からイ軍3、4番打者のチーム内乱闘が勃発と、試合は大混乱に陥ったのであった。
結局、当初の判定は覆らずに、ファールの判定で試合続行。城戸は乱闘の首謀者として退場を宣告され、今日のところはものの見事に打率低下を回避したのであった。
しかしながら、翌日にNPBから7試合出場停止の追加処分が発表。その7試合の中で、カモにしている投手との対戦がフイになり、首位打者争いで大きく後れを取ってしまうという、綺麗なオチがついたのであった。




