【イ軍編⑰】見たら死ぬキャンプ
WBC日本代表監督、田所の12球団キャンプ巡りがスタートした。最終選考に向けて、候補者のチェック作業に入る為である。
特に問題も無く日程を消化していった田所であったが、
「あれ、このスケジュールだとイ軍が入ってないけど何で?」
と、事務局に確認をしたものである。
「日程も詰まってますし、あそこは相原以外見る選手もいないですから、今回は割愛させて頂いてまして…」
微妙に歯切れの悪い回答に、田所は毅然として答えたのであった。
「いや、日本代表監督としては12球団全部のキャンプに顔出すのがスジでしょう。スケジュールの方、何とか組みなおしてください」
田所の男気溢れる物言いに、思わず天を仰ぐ事務局スタッフ。
(どうなっても知らねえぞこれ)
と、肚の中で毒づかざるを得ないのであった。
果たして、イ軍キャンプ。
そこには、相原や神崎ら主戦投手を打ち込みまくり、豪打を爆発させるイ軍の4番「アジアの空砲」城戸の姿があった。
「おいおい城戸すげえなあ。ロクな噂を聞いてなかったが、実際見ると驚くなこりゃ」
終わった…。
3年前のWBC監督のジーコと同様、城戸の猛打に完全に騙されている田所の様子に、事務局スタッフは上司からの激しい追及を覚悟した。
だが、悲劇はそれだけでは終わらなかったのである。
「俺は状態のいい奴を連れていきたいんでね。城戸は連れて行くとして、相原はちょっと調子悪過ぎるなあ…。左が少なくなるのは痛いけど、マ軍の木下がよかったから、そっちにしとくわ」
と、イ軍の左腕エース相原を候補から落とすという、事務局スタッフの顔面ブルージェイズとなる暴挙に出たのである。
こうして田所ジャパンは城戸選出で貴重な選手枠を空費し、更にはスタミナ&強心臓を揃える左腕相原落選で左打者に苦しめられる事になり、結果的にはイ軍キャンプ視察が田所ジャパンの死亡フラグとなってしまったのであった…。




