不二村の燃える力
「ゴルァ不二村! 勝負せんかいワレェ!」
イ軍1点リードの場面で無死1塁、打席にはバ軍3番松崎。ここで敬遠の指示を出したイ軍ベンチに対して、ファンからはブーイングの大合唱であった。
無理もない。
勝負所で看板打者の打撃が見られないばかりか、目下、松崎がイ軍の主砲勢田と激しい争いを繰り広げている本塁打レースで、チャンスを潰された格好になるからであった。
結局この試合、チャンスで廻ってきた2打席については松崎敬遠で通した不二村監督に、采配についての質問が集中した。
曰く、「勢田のタイトル獲得を援護する敬遠たったのか? ファン無視の敬遠ではないのか?」
不二村はこう答えたものである。
「オレは個人タイトルの為の采配はしない。あくまでも勝つ事を目的にやってる。1点差でリードしてて、絶対に負けられない試合だ。なら、やる事は自ずと決まって来る」
実際、まともな野球ファンから見れば納得の采配ではあったのだが、マスゴミ(というよりもスポーツ紙)は、明日の一面を埋める為に不二村から何か失言が引きさせないかと、粘りに粘ったものである。
と、度を越えたしつこさで繰り出された十数度目の『勢田への援護射撃疑惑』を受けて、不二村がキレた。
「だから勝つ為だって言ってんだろ! むしろ奴にタイトルなんぞ取らせたくないっての!」
かように、何か問題がある時の失言力、炎上力(藁)で、不二村監督はマスゴミ関係者からはネタ元として重宝されているのであった…。




