【イ軍編⑩】「「「「「「「「「「俺が育てた」」」」」」」」」」
昨年はほぼ二軍暮らしだったイ軍5年目外野手の多門が、一軍昇格直後から猛打連発。
イ軍では非常に珍しい若手の台頭に、ファンの間ではちょっとしたフィーバーが発生していたものである。
これに目をつけた新スポが早速特集記事の作成に取り掛かったのであるが、取材を進めるうちに、とんでもない事態が発生。
何と、打撃コーチから他部門のコーチ、ベテラン選手や果ては球団OBまで、
「多門は俺が育てた」
と言う、若手の活躍を自分の手柄にしたくてたまらない、自称育ての親が大量に名乗り出たである。
まさに噴飯ものとしか言いようのない惨状ではあったが、新スポはこの状況を逆手に取り、30人からいる自称育ての親を全員掲載。
「多門を育てた犯人はこの中にいる!!!!」
と題して、読者参加型のキャンペーンを展開してみせたのであった。
「答えは2週間後!!!!」
と煽られていたものの、当の多門が完全にフロックで当たりが止まり、ブームは悲しいぐらい沈静化。
2週後には、
「前回記事で多門選手の育ての親を名乗り出た30名の方につきまして『やっぱり俺は育てとらん』と、全員から申し出がありました。この事により、企画自体が不成立となりましたので、何卒ご了承頂きますよう、お願い致します」
というお詫びの記事が掲載されたのであった…。




