【城戸編74】タイトルメーカー
シーズン終盤、ド軍の韋駄天島村は、目下激しい盗塁王争いを展開していた。
明日からのイ軍三連戦で、タイトル争いのライバルである長森との直接対決となるが、島村にタイトルを獲らせないように、イ軍が総力を挙げて汚い戦法を取ってくる事が予想された。
そんなイ軍の包囲網を掻い潜って盗塁を決めるべく、島村は事前のビデオチェックに余念が無かったのであるが――
「おい、お前さっきから何見てんの? ピッチャーのビデオ見なくていいのか?」
そう同僚から突っ込まれた島村は、何故か城戸が首位打者を確定させたシーンや、1000本安打を記録したシーン、はたまた守備でファインプレーした超レア動画など、城戸が活躍しているビデオを延々見続けているのである。
「まあ見てろって。このビデオを見とく事が切り札になんだからさ」
島村は不敵な面構えで、自信ありげに城戸動画を眺め続けるのであった。
果たして翌日の試合本番、ファーストに出塁した島村が、昨日仕込んだ野球人生のハイライトネタを持ち出して城戸を褒め殺し。城戸が武勇伝モードに入って狂ったように自分の手柄話を繰り出し集中力を欠いたところで、投手から一塁への牽制球を受けたものである。
誘い出された形となった島村であったが、城戸は二塁手へボールを転送する事なく
「おい! 実はまだ隠された感動のエピソードがあってだな!」
と、セカンドへ向かう島村を追いかけるのみ。島村に追いついてセカンドに到達して尚、機関銃の如く喋り続けていたのである。
結局この盗塁が決め手とり、城戸にアシストさせた形で、晴れて島村は盗塁王のタイトルを獲得したのであった。




