【イ軍編1957】秘湯ナンバー
東京都新宿某所に存在する、一部の地元民しか知らない隠れ家的な銭湯「陰の湯」――。そんな秘湯に、某フリーペーパー編集者の私は、日頃の自分の慰労と取材を兼ねて、訪れてみたものである。
一見するとただの民家、どう見てもただの壁にしか見えないドラクエ落書きの部分に合言葉「ベギ」と囁くと、「ラマ」という返事と共に、小さな隠し扉がひらかれたのであった。
入ると同時に、音もなく扉が閉まり、中はごく普通の銭湯といった態であった。だが、各種の設備に配慮というか清掃が行き届いており、それだけでも非常に洗練された空間という事が、銭湯素人の私にも分かった。
そして、奇妙な事に、ロッカーの番号が、2桁の後半、あるいは3桁が多かったりと、謎の配列なのであった。
「凄いすねこのロッカーの番号…。謎感強いけど、面白いなあ」
何の気なしに呟いた一言に、常連と思しき初老の男性が、斜め上の真相を教えてくれたのである。
「それね、店主が地元のイ軍ファンに配慮してるんだよね。イ軍はとにかく弱くてヘイトホイホイだからなあ、選手の背番号があったら、色々思い出しちゃうでしょ。それで、歴代の選手の背番号を抜いてったら、そんな変な配列のロッカー番号になっちまったんよ」




