【城戸編55】ツインシュート
目下、激しい首位打者争いを展開中のバ軍佐古田とイ軍の4番「アジアの併殺王」こと城戸。
9月中旬でシーズンも佳境に入っていたのであるが、両者ともチーム内の鼻つまみ者とあってタイトル獲得援護の敬遠指令も出されず、この時期には珍しい純粋な直接対決となったものである。
しかしながら、1塁を守る城戸は右足を負傷しているのか、しきりにかばう様子を見せており、本調子からは程遠い事を窺わせた。
タイトルを獲る為ならどんな卑怯な手でも使う事で定評のある佐古田が、城戸の負傷を見逃すはずもない。2死1、2塁の状況ながら、打点を挙げる事が仕事の3番打者にも関わらず掟破りのバントヒットを狙いに、一塁線へ転がしにかかったのであった。
「かかりやがった!!!!wwww」
そこへ邪悪な笑みを浮かべて猛然とダッシュする城戸。
本当は足を負傷なんぞしちゃあいない、佐古田の安打を一本摘み取る為の、とんでもなく面倒臭ぇ仕込みだったのである。
だが、これで上手く行くかといえば、いかないのが城戸の城戸たる所以、いわゆる「ブーメランベースボール」の真骨頂であった。
城戸の偽装に引っ掛かったのは佐古田だけでなく、登板していたイ軍投手の簑島も同様だったのである。
自分で捕りに行かねばと簑島も打球へダッシュした結果、城戸と交錯し、ツインシュート状態でボールを蹴り飛ばしてしまったのであった。
結局、城戸と簑島が必死こいてボールを追いかけてしまった結果、
「あれはフツーに捕れなかったんじゃねえの?」
と、佐古田のバントを公式記録員がヒットとして判定。更にはこの珍プレーが原因で打者走者の佐古田までホームに生還してしまい、イ軍としても万事休す。
城戸のしょーもない企みは決勝オウンゴールとなって、佐古田とバ軍を勝利に導いてしまったのであった。




