【城戸編52】顔芸クライシス
イ軍の絶対エース相原。
チャンスで一本出ない大便秘打線と、ここぞのポロリが光る草野球守備に足を引っ張りまくられながらも二桁勝利を期待できる、イ軍の切り札的存在である。
そんな相原であったが、ここ数試合連続して打ちこまれていた。
一体何故なのか。
まだシーズン開始2カ月目でスタミナは充分。
更に、投球時の癖もビデオでは確認出来ず。
相原本人に打たれる要因が無い以上、内部の誰かが球種をバラしているのではないか――。そう疑わざるを得ない状況なのであった。
「おいおい、そんな風に身内を疑うもんじゃねえぜ」
この悪い雰囲気に、「4億円の凡打製造機」こと4番城戸が立ち上がった。
「お前ら、このチームにはなあ、そんな事する奴はいねえよ」
と言ったまではよかったが、
「実はここだけの話だがな、俺はあいつが怪しいんじゃねえかと思ってる」
などと、この危機的状況を無駄に煽って楽しんでいるのであった。
一方その頃、バ軍スコアラー会議室。
「うーむ、相原本人の癖が見破れなきゃ、周りを眺めてみろ、か」
「ええ、苦し紛れで画面をズームしてみたら、思わぬところからダダ漏れでしたね」
「そうだな、一塁の城戸が『ふーん、そう来ますか』というタコ口になったらカーブ、『おっ、決め球来るのかい?』というドヤ顔ならスライダー、『今日は何km出ますかねえ』という上から目線でアゴを上げたらストレートと、奴の顔芸で球種が全部読めちまうんだもな。チャンスでは凡退するし球種は教えてくれるし、全く城戸様々だわな」




