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限定ビール購買券

　またぞろイ軍がブーイング必死の企画である。

　新宿スタジアムの内野指定席がまさかの完売。

　年季の入ったベテランファンでも見た事が無いという異常事態に、応援団系の過激派ファンが陣取る外野席は騒然となった。

「一体何が起こりやがったんだ！？」

　幾人かで編成された偵察隊が派遣され、彼らは恐ろしい光景を目の当たりにする。

「何だこのコ○ケ会場みてえなオタ率は………しかも雑巾みたいなとんでもねえ臭さだ！」

　そのオタの群れの中を、超高性能現金回収機…いや、今をときめくアイドルグループのメンバーがビールを売り歩いているのだった。

　握手券とやらが付いたビールは一杯２０００円也。しかしそれでも飛ぶように売れており、握手券だけ回収してビール投げ捨てという、かつてのビックリマンチョコ状態の凄まじい現象が巻き起こっているのであった。

「何だこの糞企画」

　偵察隊の面々は、それだけ呟くのがやっとで、呆然と眺める事しか出来なかった。

　そしてビール販売は８：４５分を以って終了。

　同時に、潮が引くのを早送りしたかのようにオタ軍団も球場を後にした。

　試合の方は稀に見る緊迫した展開で、逆転に次ぐ逆転、イ軍の最終回の攻撃を残して同点、打席には最も期待が持てる真木、という場面。

　だがしかし、イベントの余波で、一打逆転サヨナラという最高の舞台にも関わらず内野指定席には誰も残っちゃいないという、あんまりといえばあんまりな惨状となっていたのであった…。