【イ軍編②】イ軍流FA獲得戦法
FAとなったメジャー200発男アームブリスターを巡って、イ軍とド軍の争奪戦が勃発した。
まだ30歳と比較的若く、前年アストロズで打率3割、26ホーマーをマークした現役バリバリのメジャーリーガー、シド・アームブリスター。
しかしながら我が強いトラブルメーカーで周囲との衝突が絶えず、人種差別発言を繰り返した事でオーナー筋から敬遠され、メジャーからはまさかのオファー無しという事態に陥っていた。
そこで悪徳&強欲としてメジャーで名高いアームブリスターの代理人が日本球界に売り込み、間抜けな…いや、恐れを知らない前述の二球団が名乗りを上げたというワケなのであった。
しかしながら、資金力で劣るイ軍に当然勝ち目などあるワケもなく、ド軍との契約は時間の問題と思われた――かに見えたが、ド軍に送られた一本のビデオが全てを変えてしまった。ド軍が提携するマイナー球団の選手のビデオである。
そこには、走攻守にズバ抜けた才能を発揮している、まさに原石といえる選手の姿が映っていた。更に、バリー・ボンズら米球界の著名人が、「彼こそ俺の再来だろう」「絶対にレジェンドになれる存在」等々、惜しみない賛辞を与えていたのであった。
更に、GMのメッセージとして
「この選手はビッグリーグに上がれば間違いなくスターになれる逸材だが、今のメジャーチームではポジションが埋まっており、出場機会に恵まれていない。この1年は日本に武者修行させたいので、よろしく頼む」
といった内容の依頼まであったのである。
この選手が凄まじいイケメン、かつマイナーでの実績も2割8分、35ホーマーと決して悪くなく、そして費用もアームブリスターの年俸の10分の1で済みそうだという事で、ド軍は土壇場で方針転換したのであった。
これにガッツポーズが止まらなかったのがイ軍首脳陣である。
「よしゃ、ウチのCG班がいい仕事してくれたぞ! これでアームブリスターを獲得できる!」
「クックック、あのビデオが全部ヤラセだと知ったらド軍の連中驚くでしょうねー。別に何も期待されてない、その辺にいるようなマイナーリーガーなんすけどね」
「しかしバリー・ボンズが喋ってんだもんなあ。アレ知らなかったら絶対本物と勘違いするって」
「ド軍の間抜け連中、イケメンだから集客効果に期待とか言ってたけど、ビデオじゃ散々加工したっつってたからな。実物見たときの反応が超楽しみだわwwww」
ド軍をディスりまくりながら、久々の大物獲得にご満悦であった――キャンプ初日、アームブリスターが現れるまでは。
結局、このアームブリスターは代理人が仕込んだ同姓同名の別人で、マイナーで1シーズン200三振の記録を作った「マイナー200振男」だったのである。
そんな紛い物に単年3億を投じたイ軍の補強戦略は顔面ブルーレイを通り越して真っ白に燃え尽きた態。
更にはド軍がイ軍CG班に騙されて獲得した若手マイナーリーガーが日本球界との相性抜群で、イ軍をカモにしながらいきなりMVP級の活躍をカマした事で、2段オチがついてしまったのであった…。




