長森天才説
イ軍の若き大砲、長森。
ドラフト8位の下位指名高卒選手ながらも、イ軍2軍の劣悪な環境から這い上がり、遂には1軍に定着。30本塁打(180三振もついてくる)が見込める長距離砲として、急速に知名度を上げつつあった。
2軍で長森を付きっきりで指導した伊倉氏は語る。
「あいつが私のところに来た時は、コーチの誰にも相手にされず、クビ寸前だったんです。当時、長森の素質を見抜けなかったマヌケ首脳陣は小技の使える2番タイプとして育てようとしてたんですが、あいつは『俺は長距離砲だから』と、徹底して反抗してたんですね。それで私が指導して、あいつも必死に努力して、ホームランバッターとしてモノになったと。ただ、あいつは努力型のようで、紛れも無い天才ですよ。バッティングなんか全然分からない、無職おやじの私の適当な指導であそこまでになっちまうんですから。私が2軍球場のベンチに座ってたら声を掛けてきてね、月10万円のバイト代を吹っかけたら、私の事をイ軍のOBか何かだと信じちゃってねえ。イ軍の野球帽被ってただけなんですけど。今後は、そういう純粋過ぎるところが弱点にならないか、心配ですね」




