【城戸編47】フィクサー気取りの代償
マ軍の巧打者塩原の打撃は明らかに狂っていた。
左打席から広角に打ち分ける打撃が持ち味にも関わらず、本日の試合は全球極端な引っ張りに徹しているのである。それがフェアになるならまだしも、全てファウルゾーンに切れてしまっている。一体どうしてしまったというのか…。
「塩原の野郎、今日バレた不倫スキャンダルが原因で調子狂わせやがったか」
マ軍一塁コーチの簑島は思わず一人ごちたものである。そう、本日付の各スポーツ新聞が、塩原がAV女優とホテルから出てきた場面を捉えた写真を掲載し、大騒動になっていたのであった。
「フッ、それだけじゃないぜ」
と、そこに割り込んで来たのがイ軍の一塁手にして4番、「歩く不良債権」こと城戸である。
「あんたと塩原の仲の悪さは有名だからな。『不倫がバレたのは内部告発なんじゃないの? 例えばお前の事嫌ってる奴とか。ほら一塁コーチの』」
おいおいこの野郎! と、憤る一塁コーチには構わず、ドヤ顔トークを続ける城戸。
「そう塩原に俺の名推理を話してやったのよ。そうしたらあの野郎、どうも試合中に暗殺してやろうと、あんたを狙って引っ張りまくってるようだな藁」
城戸死ね! と思いながらも、一塁コーチはそろそろと立ち位置をずらす。彼に話を聞かせる為に、城戸も無意識に動く。
「ま、俺の頭脳プレーが呼んだ塩原封じがまんまとハマったという」
そこまで言ったところで、一塁コーチを狙った打球が、ファウルエリアまでおびき出された城戸の背中に直撃! 大事を取って病院送りとなったのであった。
「フッ…試合に勝って勝負に負けちまったってか…」
等と最後までみっともないポーズを貫き通した城戸であったが、塩原は無安打だったもののイ軍炎上投手陣が他のマ軍打者連中に打ち込まれ、試合にもしっかり負けたのであった…。




