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【綿貫編⑦】ザ・サイン
二塁打で出塁した綿貫の動きが怪しい。
いや、怪し過ぎた。
バ軍投手が投球モーションに入るや、打席のイ軍赤田に向かってやたら大ぶりなジェスチャーを展開――要は、どう考えてもサイン盗みとしか見えない動きをカマしているのであった。
これにはバ軍バッテリーが大激怒。すぐさま二塁へ急行し、
「おいコラ、いい加減にしろや!」
「派手にやりやがって、俺らを挑発してんのかコノヤロ!」
綿貫に詰め寄ったのであるが、彼奴の逆ギレ回答は想像の遥か斜め上を行っていたのであった。
「うるせえバーロー! 確かにサインは盗んでるが、赤田の野郎を打たせない為に全然違う球種を伝達してるっつーの!(※赤田は若手の次期正捕手候補で綿貫のライバルであった) あの野郎、完全に自分の世界に入り込んでシカトしやがるから、大袈裟にやらざるを得ないんだよ!」




