イ軍版ジキルとハイド
イ軍秋季キャンプで、驚異の外人投手ジョンストンが入団テストを受験した。
紅白戦に登板し実戦的な投球を披露したのであるが、カットボールから始まってフォーク、ナックル、カーブ、スライダー、シュート、極めつけはスピッドボール藁と、まず球種のレパートリーが異様に広い。更にイニングによってオーバースローとサイドハンドを使い分ける事で、打者が球筋を見極めるのに難儀し、三振と凡打を量産していくのであった。
「投球パターンを変える為にスイッチを切り替えてる」
として、イニングの合間にトイレにこもりなかなか出て来ないのはご愛嬌であるが、スタミナも申し分なく、先発不足のイ軍としては是が非でも欲しい逸材である。
そこで、他球団に持ってかれる前に早手回しに契約しちまおうという球団方針で、登板中のジョンストンに通達される事になった。だがしかし、球団職員が、ちょうどイニングの合間でトイレにこもっていたジョンストンを呼びに行った時、衝撃の事実が明らかになったのであった。
「な…………ジョンストンが2人!?」
そう、投球のレパートリーが広い等とは全くの錯覚、単にオーバースローとサイドスローの双子がイニング毎に交互に入れ替わっていただけなのであった。




