イ軍流入団交渉
今年のドラフトでイ軍が4位指名した、井伏高校の二塁手舞岡。
上位指名した3人には早々に入団を拒否られ、唯一残っているまともな素材とあって(5位以下はロクな候補がおらずテキトーに指名してしまった)、球団社長も出馬するなど必死こいて入団交渉にあたったのであるが、舞岡は自分の才能に確信が持てないのか、全く乗り気でない。事態は暗礁に乗り上げてしまっていた。
――こうなっちゃあ奥の手を使うしかねえ。
数合わせで帯同していたパネマジ広報こと白井は、必殺のトークを繰り出したものである。
「舞岡君、我々は確かにお金はあまり持ってないけど、才能を見抜く目には自信があるんだ。君と同じドラフト4位で今はエースになっている相原始め、サ軍の戸倉やマ軍の浅羽、ジ軍の本橋なんかも、実はイ軍のOBなんだよ。だから、我々の眼力を信じて、君には是非プロの世界に飛び込んで来て欲しい」
今や球界を代表する選手の戸倉、浅羽、本橋がイ軍OB?
この事実は知らなかったらしく、舞岡の表情が明らかに変わった――もしかして、俺でもやっていける?
突破口を開いた後は早かった。
一緒に強いチームを倒そう、君なら一年目からレギュラーを獲れる(かも)、球団もバックアップを惜しまない(言うのは自由)等々畳み掛け、遂に契約にまで持ち込んだのであった。
「いやー、一時はどうなる事かと思ったが、白井よ、お前の戸倉がどうとかの話は効いたなアレ」
「ええ社長、ただし、戸倉たちがイ軍OBなのは本当なんすけど、奴らが開花したのはイ軍を放出されて他球団でまともな指導者と巡り合ったからなんですけどね藁」




