【アームブリスター編⑥】来季契約へ掛ける橋未遂
「今年こそはイケる!」
と、中途半端な補強と首脳陣すげ替えだけで無責任に煽り立てた結果、例によってチームとしては8月の時点でペナントは終戦していたイ軍。
しかしながら、個人記録の関係で、数人の選手は未だに緊迫感のあるシーズンを送っていた。
その内の一人、新外人野手アームブリスターも、来季の契約が当落線上にあるとあって、それまでのやる気の無さはどこへやら、今となっては特に大勢に何の影響ももたらさない、無駄に必死なプレーを披露したいたのであった。
今日も今日とて、二塁打の当たりを、暴走に暴走を重ねて何と無理やりランニングホーマーにしてしまった――三塁を踏み忘れていなければ。相手チームの三塁手のアピールで、あっさりとアウトになったものである。
これに対してアームブリスターは猛抗議、退場になっては安打が稼げないことから、手が出ないように自ら腕を後ろに組んだスタイルで、ワケの分からない、実にキモい動きで審判を威嚇したのであった。
そこへ、今年限りでの退任が決まっているイ軍監督代行の代行の代行沢渡が、ベンチからノロノロとやってきたものである。
「おいブリ、もうその辺にしとけや」
全く抗議する気の無い沢渡の様子に、ブリは激昂。
「オイカントク! イクラアンタガコトシデクビカクテイダカラッテ、ソリャナイデショ! モットブリチャンヲエンゴシテヨ!」
必死こいて喰って掛かるものの、沢渡の答えはアームブリスターにとって絶望的過ぎるものだったのであった。
「いや、三塁の判定覆っても無駄なんだよ。だってお前、二塁も踏み忘れてんだもの」




