盗塁王争い(迫真)
セリーグも最終節に入り、タイトル争いも佳境に入っていた。
今シーズン、盗塁王の大本命、マ軍蓑田が故障で全休している影響で、タイトル争いはイ軍竹垣とバ軍吉田が、現状両者13盗塁という超低レベルな争いを繰り広げていたのであった。
そして、最終3連戦がイ軍―バ軍の直接対決となったため、異常な回数の執拗な牽制、意図的な悪送球による被進塁を狙う(しかし盗塁する為に塁に張り付かれたまま)等、あからさま過ぎる超みっともない泥仕合が展開されたのであった。
そして迎えた最終戦。
初回、吉田に出塁された段階で、イ軍ベンチは遂に最終兵器を投入。
何と、二塁に左投げで外野が本職のジャスティスを起用したのである。左投げの二塁手とか監督の不二村はいよいよ頭が狂ったか、と、ファンたちは罵声を浴びせたが、新スタ常連の2丁目勢は、
「やるじゃない、不二村(監督)」
と唸ったものである。
ジャスティスといえば、味方だろうが敵だろうが容赦なく喰っちまう事で悪名高い、異常な男好きが原因でメジャーを追われた程のハードゲイである。それに加えて、全国ネットのインタビューで日本で印象に残る選手を訊かれて、挙げた名前が全て自分好みのイケメンだったという程の徹底っぷり。その中に吉田が入っていた事もあり、彼にかかる心理的な重圧たるや、並大抵のものではないのであった。
それでも吉田は果敢に盗塁を試みたのであるが、ジャスティスが腰を前後に動かしながら抱き止めるジェスチャーを見せた事もあって、彼のスライディングはジャスティスを避けるように外野側へ逸れていき、敢え無くアウト。
その後、吉田は一度二塁打を放ったのであるが、その際はイ軍ベンチがジャスティスを三塁に廻す執念を見せ、大ブーイングに祝福藁されながら盗塁王のタイトルは吉田―竹垣で分け合う形となったのであった…。




