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10人目の戦力②
普段、人を人とも思わぬ言動で悪評たらたらのイ軍“歩く不良債権”城戸であったが、本拠地新宿スタジアムのグラウンドキーパーだけは、下にも置かぬ扱いで接していた。
シーズン終盤、なんちゃって首位打者がかかる状況になってからは、いよいよ丁重な接し方となり、連日遅くまで打ち合わせを繰り返し、その後は高級クラブを全額奢りでハシゴまでしたものである。
そして、本拠での最終三連戦。
ここで毎試合2安打ペースの6安打しなければ首位打者争いから脱落してしまうという非常にタフな状況で、何と城戸は8安打を記録。その内容というのが噴飯もので、8安打全て内野安打。毎試合、件のグラウンドキーパーが、一塁線、三塁線に一見それと分からぬ微妙な窪みを作り、城戸が無駄に巧みなバント技術で、そこに押し込んだのである。
これには心ある野球ファンが大激怒、首位打者返上しろ! との声が渦巻いたが、
「何らルールに抵触していない」
と、城戸は涼しい顔で言ってのけたのであった…。




