球場カーチェイス
球場の不入り具合が秋風よりも冷たく感じる、9月末の東京新宿スタジアム。
ぶっちぎり最下位イ軍と5位のモ軍とのド消化試合は、特に見どころらしい見どころも無く、極めて淡々と進んでいた。
そして4回、来季を睨んで先発登板したイ軍の若手があっさりと炎上した後を受けて、何故かエース右腕の神崎がリリーフカーに乗って登場したものである。
と、思ったら、外人投手マリオもリリーフカーに乗って現れ、マウンドまでの短い距離、神崎と激しいカーチェイスを繰り広げたのであった(経費節減の折、リリーフカーを女性スタッフが運転するでなく、それぞれ神崎、マリオ自身が運転していた)。両者、激しく接触しながら、相手がマウンドに降りるのを全力で阻止しようとしたため、球場中を走り回る仕儀となったのである。
スタンドからは、
「おい神崎! 今日は『リリーフ俺!』は通らねえようだなあ」
というヤジが飛びまくり。インセンティブ目当てで投球回数を稼ぎたい神崎の思惑はバレバレなのであった。
と言って、先発ローテに組み入れられているマリオがリリーフ登板するというのも普通に考えれば有り得ない。
球場のオーダーには神崎でもマリオでもない『青野』の名前が表示されている。
つまるところ、マリオの方も投球回数稼ぎ目当てという、イ軍投手陣によるとんでもなくみっともない内ゲバが展開されたのであった。




