トライアウト最強軍団
「お前は野球選手としては使い物にならない」
球団にそう通告された現実を受け入れられない連中が、遅過ぎるタイミングで本気出す――12球団トライアウトの時期となった。
必死な者、どこか気が抜けている者、けじめをつけに来た者…。
動機、そして表情はそれぞれだが、折からの合格率の低さもあって、会場には重苦しい緊張感が立ち込めていた。
そんな中、陰鬱とした空気を吹き飛ばす快打・快投を見せたのが元イディオッツ勢4名である。
一体何故こんな素晴らしい選手が埋もれていたのかと、各球団関係者たちは眼を見張った。さすがにレギュラーは無理にしても、プラトーン要員、ロングリリーフ程度なら一軍で立派に務まりそうなレベルである。
また、イ軍は環境が最悪で、それを変えてやる事で、選手にも思わぬ伸びしろが有るかも知れぬ。年俸を抑えれば、存外良い買い物になるのではないか――。
と、いうのが例年の流れであった。
しかし、いざ獲得後、あのトライアウトは何だったのかと思うほど全く働かず、挙句イ軍特有の倦怠感をチームに持ち込み、ふと気がつけばマイナス要素のみ眼に付くようになる…。
チームを離れて尚、球界に迷惑を掛け続けるイ軍遺伝子。
そういった前例が後を絶たない為、元イ軍選手の溌溂としたプレーに、球界関係者は一様に警戒の目を向けるのであった…。




