胴上げ誘致
セリーグのペナントレースもいよいよ大詰め、9月末のバ軍―タ軍戦。
バ軍10年ぶりのペナント奪回が掛かっているとあって、全国のプロ野球ファンが大注目する一戦であったが、今日の試合はタ軍が意地を見せて地元での胴上げを阻止。バ軍はマジック1のまま、東京新宿スタジアムに乗り込み、イ軍との3連戦に臨む事に相成ったのであった。
「いよっしゃああああああああ!!!!!!!!」
この結果に大歓喜したのは、セリーグ制覇に首の皮一枚繋がった目下2位のド軍関係者――――――――ではなく、イ軍球団“パネマジ広報兼営業部長”こと白井であった。
首位から40ゲーム離されている、もはやペナントとは何も関係が無いイ軍関係者が、なぜ狂喜乱舞しているのか。それは、
「これで明日はバ軍ファンが大量に押し寄せて大入り確定だな」
という、極めて生臭い営業的観点からであった。
「しかし白井さん、2位のド軍が負けてマジックが消えて、試合が無いタイミングでバ軍優勝が決まったらどうすんですか?」
と、部下からはせっかくの勢いに水を差す突っ込みが入ったものであるが、
「バカヤロ、こういう時こそ営業の腕の見せ所なんだよ。その場合は『東京のファンに優勝を報告する』っつー事で、新宿スタジアムを解放して胴上げやらせる段取りを、バ軍と既につけてある。当然ファンも入場させる。割増料金でな。誰も得をしねえ駐車場胴上げなんか絶対にさせねえよ」
一体あんたはどこのチーム関係者なんだ、という回答がドヤ顔と共に返ってきたのであった…。




