【城戸編35】敬遠でファンを大歓喜させる4番
イ軍―バ軍戦、5-5の同点で迎えた8回裏、イ軍が1死1、2塁と珍しく終盤でチャンスを作っていた。
打席には、今日の4打席で2ホーマー、2二塁打と当たりに当たっている4番城戸。まさかの大当たりで余程調子に乗ってしまっているのか、
「ホームランOK」
とでも言わんばかりに、外野スタンドを指差し確認するという浮かれようであった。
さて、そのようなイ軍が試合を決める大チャンスの状況であったが、ここでバ軍ベンチは敬遠を選択。
捕手がプレートを大きく外して捕球態勢に入った段階で、何故かイ軍ファンから万雷の大歓声が巻き起こったのであった。
チャンスでの4番敬遠で大ブーイングを覚悟していただけに、呆気に取られるバ軍ベンチとバッテリー。一体何がどうしたってんだ?
「っしゃーナイス敬遠!」
「いくら当たってようがチャンスじゃ一番信用できねえからな城戸は」
「今日の4安打も全部ランナー無しの状況だしな」
「岩島(バ軍監督)の野郎がデータ軽視で助かったわ。城戸の野郎が得点打率1割未満って分かってねえんだよ」
「更にランナー1塁に置いた時の城戸の併殺率は8割だからな。これで勝つ確率が跳ね上がったってもんよ」
そうとは意図せずイ軍をアシストした形のバ軍ベンチに大声援藁を送り、テンション爆上げのイ軍ファンたちであった。




