【不二村監督編④】場外工作
「ほぉ~、いいスイングしとるなあ」
ブ軍の新鋭、上原のフリーバッティング。
鋭いライナーでフェンス直撃打を連発している所に現れたのは、イ軍打撃コーチ原島である。
上原世代の野球少年たちが、一度は必ず憧れの対象とした往年の大スター原島(素行の悪さから落ちぶれて現在はイ軍打撃コーチにまで転落)から、思いもよらず声を掛けられて、さしものふてぶてしい彼も直立不動となったものである。
「ありがとうございます!」
「うーん、いいね~。上原君。君はいいよ。シュッとキレのある振りをしてるねえ。君は自覚が無いかもしれないが、ホームランのタイトル狙えるね。いや、狙わないのは勿体無い。君のところの打撃コーチがどう言っているか分からないが、間違いない、君はホームラン50本は確実に狙えるよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「本当は違うチームだからあまり教えたくないんだが(苦笑)、球界全体の事を考えて、特別にコーチしてあげよう」
「よろしくお願いします!」
かくて今宵の試合。
原島の「特別指導」を受けた上原は、打撃フォームを完全に崩して3三振1併殺。3番打者の不調で打線が寸断されたブ軍は、イ軍のロートル神崎の前に、まさかの完封負けを喫してしまったのである。
不二村監督の差し金による「“壊し屋”原島」のブ軍打線破壊工作は、まんまと成功せしめたのであった。




