【イ軍ファン編③】斜め上の優しさ
“落ち武者メジャー”こと、イ軍が獲得した元メジャーリーガー武藤。
35歳という年齢で、何とか最後の一花は咲かせられるのでは、という儚い希望も虚しく、年俸2億5千万ながら、まるで打てない、守れないで早くも大型不良債権と化してしまっていた。
毎度の事とはいえ、年俸が年俸だけにイ軍ファンも大激怒、容赦の無い大ブーイングを浴びせたのであるが、この状況を何とかしようと、某私設応援団の団長が立ち上がった。
曰く、
「獲っちまったものは今更仕方がない。だが選手層が超薄い上に大金かけてる分、球団も試合に出し続けるんだろうし、だったら武藤が打てるように俺たちが応援した方がいい。奴が去年までいたメジャーの環境に、少しでも近づけてやろうぜ」
翌日の試合。
「BOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」
前述の私設応援団は、武藤への容赦の無いブーイングを繰り返していた。
結局ブーイングしてんじゃねえか、と、新スポ記者が団長に突っ込み取材を入れたところ、
「武藤の違和感を小さくするために、全部英語に変えた。去年と同じ環境にしてやったんだ、これでホームシックが解消されて打てるようになるだろう」
と、まさかの斜め上回答。
結果、武藤は思い出したくも無いメジャーの挫折を思い出さざるを得ず、余計に調子を狂わせたのであった。




