少年よメジャーを目指せ
ダイヤモンズ以外、入団拒否。社会人に行って3年後のドラフトを待つ。
プロに入っても即戦力として10勝は固いと言われている超大物高校生右腕、三田。
仮に指名しても入団確率はほぼ0%、指名権のドブ捨てになると言われながらも、ドラフト会議で、イ軍は三田を敢然と指名してみせた。
更に、こういう時だけ無駄に運が強い球団社長の唐津が当たりクジを引き当て、三田と関係者たちは、絶望の淵へ叩き込まれたのであった。
大方の予想通り、入団交渉は困難を極めた。
担当スカウトが指名挨拶に向かったものの、まず本人と会う事すらできない。門前払いが、4度、5度と、続いていった。
その後更に、スカウト部長、監督、球団社長と、訪問者の役職は上がっていったのだが、それでも両親と会うのがやっとで、本人には全く面が取れない状態が続いたのであった。
そして最後に、GM柳澤が交渉に乗り出す。
何かと話題に事欠かないいわくつきの美女出馬に下衆な根性が刺激されたか、これには三田本人がようやく現れ、話だけは聴くといった算段になった。
両親を交えて3時間、更にサシで1時間話し込んだ結論…。
それは、やはりイ軍には入団しない、というものであった。
だがしかし、事態は急展開を見せる。何と、今までそのような事は一言も口にしなかった三田であるが、ここにきて長年の秘めたメジャー志向を吐露し、一転、メジャー挑戦の決意を語り始めたのである。
これには球界及びファンたちも驚愕。柳澤との密室会談で一体何があったのかと、しばらくは噂(というよりも下劣な好奇心)の的となったのであった。
収まらないのは、社会人を経由して獲得を当て込んでいたダイヤモンズだ。本人の意志とはいえ、イ軍に補強構想を崩された格好になってしまった。――柳澤が三田を煽って、無謀なメジャー挑戦に走らせた事によって。
そして、それこそが――三田をダイヤモンズに入団させない――事こそが、ダイヤモンズに異常な対抗心を燃やす、柳澤の真の目的だったとも言われている。ドラフト1位指名権を空費してまで、ダイヤモンズにダメージを与えずにはおれなかったというのである。
一体何が彼女をそこまで駆り立てるのか…。真相は闇の中だが、選手入団で辛酸を舐め続けている弱小球団が、金満球団に一泡吹かせたのは事実であった。




