【不二村監督編②】禁断の打撃指導
「おう城戸、今日の先発対策でちょっと打ち合わせするぞ」
大不振でチームの敗北要因になりながらも、契約上の問題で自分から言い出さない限り(言うワケないのだが)四番を外せない“人間ブレーキ”こと城戸に対して、ここ最近、城戸の凡退で何試合か落として怒り心頭の不二村監督が遂に直接指導に乗り出した。
「知っての通り、サ軍先発谷岡はここ数年NPBナンバーワンのすげえピッチャーだ。速球は150km超えてるし、持ち球も多いと来てる。だからよ、狙いを絞るしかねえんだ。とりあえず、直球、スライダー、カーブ、フォーク、シュート、カットボール、チェンジアップ、全部捨てろ」
この物言いに、現役時代に何の実績も無い不二村を見下し切っている城戸は、冷笑で返したものである。
「監督、それじゃ打つ球が無いっすよ。これだから打てなかった人は…」
自分の実績の無さを突っ込まれて、普段ならこれだけでキレてしまう不二村であったが、今日に限っては何とか耐え切り、
「要はバットを振るなっつってんだよ。今のお前は振ったらアウトになる、自動アウト製造機なんだからな」
前々から用意してあった指導に見せかけた超皮肉をぶちまけたのであった。
城戸と不二村のベンチ内乱闘はもはやイ軍名物となっていたが、本日は珍しく、城戸から開戦のケースと相成ったのであった。




