【城戸編28】チャリティーホーマー
“ホームラン1本につき1000万寄付する”
人気取りに必死のイ軍の4番城戸が、個人でまさかのキャンペーンをぶち上げた。ホームランを1本打つ毎に、この種の企画では破格の1000万円を福祉施設に寄付するというのである。
契約更改時、あの手この手で年俸を吊り上げようとする守銭奴のイメージが定着している城戸だけに、この情報は驚きを持って迎えられた。
だが、何と言っても、球界随一の【とんだ一杯喰わせ者】の城戸である。
長年4番を張っているにも関わらず、ここ2、3年ホームラン数が激減している事に加え、キャンペーン発表当日の試合から、
「ホームラン、捨ててます」
と言わんばかりの、バットの握りを余した、あからさまな単打狙いのバッティングスタイルになっていたのであった。
そして、今日も今日とて0-13と試合の趨勢がイ軍の大敗でほぼ決まりの9回裏、打率維持目当てで小さなスイングをした城戸のバットから、まさかのホームランが飛び出したのであった。
自分で打っといて城戸も予想外だったのか、一瞬放心状態になった城戸。
直後、高々と舞い上がった打球に対して、「スタンドに入るな!」というボールを引き寄せるかのような必死のジェスチャーを全力でカマしたのだが、無情にも打球はフェンスを越え、敢え無く1000万円を寄付する仕儀となったのだった。
これには球場も大爆笑。
ショックのあまり、産まれたての小鹿のようにフラフラしながらダイヤモンドを一周した城戸を、ファンたちは大歓声で迎えたのであった。
湧き上がる球場で、イ軍の用具担当玉名と球審若山がアイコンタクトを取り、深々と頷き合った。これ全て、玉名と若山が城戸憎しで飛ぶボールを仕込んだ事で演出した、ヤラセホームランだったのである…。




