【城戸編⑳】存在の逆証明
“帳尻の鬼”ことイ軍の4番打者城戸が、内野安打を狙った無理な走塁が原因で左膝を故障した。
次の3連戦は城戸が特に苦手とする左腕3枚を並べたダ軍の表ローテとあって、
「城戸は膝じゃなくて根性を故障してんだろ」
と、仮病疑惑が拭いされないところではあったが、とにもかくにも、イ軍打線はしばらく4番打者を欠く事態となってしまった。
これに奮起したのが残されたイ軍打撃陣である。
城戸の故障者リスト入りが確定したその夜、急遽決起集会を開いて気勢を上げ、
「こういう状況だから、とにかく打って打って打ちまくろう!」
と、大いに盛り上がったのである。
これを病院で聞いた城戸、
「あいつら、気付かないうちに成長してやがって…。これも俺が背中で引っ張りまくってきた成果だな」
と、よしゃあいいのに上から目線の一言を添えて、取材陣の顔に苦藁いを浮かべさせたものであった。
だがしかし、今回の件はもちろん美談なぞであるはずがなく、
「城戸がいないうちに打ちまくって、奴の存在が無意味な事を証明しよう! そんでクビに追い込んで奴の年俸4億を山分けしよう!」
と、城戸憎しでの盛り上がりだったのである…。




