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チームの為を思ったスコアラー編
加齢と不摂生が原因の大不振で、極めて層の薄いイ軍にあってさえベンチウォーマーに転落した城戸。
普段は一顧だにしないのであるが、藁をも掴む思いで、スコアラーに過去の投手との対戦データを出させたものである。
ひとまず昨年からのデータを参照した城戸であったが、そのあまりの内容の悪さに、自分で愕然としてしまったのであった。昨年はトータルで2割8分5厘と、そこまで悪くないはずなのに、対戦全投手にたいして、ほとんど凡退した記録しか残ってない。
「おいこら、データ間違ってねえか? こんなんじゃ意味ねえよ。チームにマイナスになるような事やってどうすんだよ」
城戸の突っ込みに対して、スコアラーは事もなげに答えたのであった。
「ああ、確かにデータは間違ってる。いくら駄目になりかけのお前でも、実際もうちょっとは打ってるよ。ただな、往生際の悪いお前もこれを見りゃあ、さすがに引退に傾くだろ。引退となりゃあ、お前の年俸でムダ金になっちまってる2億が他の弱い部分の補強に回せるんだ。データは間違ってるが、チームの為を思えば、この行動は正しいんだよ」




