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二十八歳、六畳一間での独白

作者: 桜井 楽左

早く大人になりたい。そんな事を、子供の頃はよく言っていたように思う。

それは仕方がないと思う。なにせ自分が集めていたトレーディングカードを好きなだけ買え、好きな時にジュースやお菓子が手に入り、車という体力を使わずに移動できる手段を持っていたのだから。

 当然、時間が経つにつれてそれらの憧れには相応の代償が必要だと気が付く。だけど、僕は大人への憧れは捨てきれなかった。


 そんなステキな勘違いは、残念ながら就職するまで直らなかったのだけれど。

 

 「ああ、子供に戻りたいな」


 そんな子供時代に抱いていたある種の夢とは正反対の言葉を、六畳一間の安アパートで呟いてみる。目の前にはトレーディングカードも、ジュースも、お菓子もなく温くなった缶ビールが一缶置いてあるだけだ。当然、共同駐車場に駐車してあるのは車ではなく、自転車である。


 我ながら、幼い自分にはとても見せられた姿ではないと自嘲気味になってしまう。


 まあ、そもそもあの頃の僕は大人にも色々な人間がいるということを分かっていなかったので――――歳を重ねれば誰でも両親のような立派な大人なになれると信じていたので、きっと彼から見れば僕は大人ではないのだろう。


 まず今の僕ですら自分が大人だと胸を張って言えるのか怪しい。


 一か月の大半を仕事に費やし、趣味も人並み。恋人も居たこともあるし、友人だってある程度はいる。その中に親友と呼べる人間も居ないわけではない。そんな学業を仕事に置き換えただけの人間が、果たして大人なのだろうか。


 納税義務や、飲酒・喫煙、運転免許の取得などが出来る歳になれば大人だという人がいる。なるほど、それはもっともな意見ではあると思うが大学進学をせず就職をした高卒社会人の友人は、少なくとも最近までは大学生と同じだったように思う。


 だとすれば、大人とはなんだろうか。


 それは、ひょっとしたら子供に戻りたいと思う人間が大人になるのではないだろうか。


「知り合いの社長さんとかも、子供みたいだしなぁ」


 ゴクリと温いビールを飲む。そこでもうすぐ今日が終わろうとしていることに気が付いた。


 さて、こんな無駄な思考は止めて、とっとと眠る事にしよう。


少なくとも、夢の中では子供に戻れるのだから。



大人ってなんなんでしょうね。

本当に不思議だ。

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