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第四章 「Dear my only sister ~二度目の決断~ 」

「・・・はぁ」

「どうした翔、最近ため息が目立つな。あの日か?」

征の手伝いの休憩中、龍二が話し掛けてきた。

どういうわけか、最近はコイツも手伝ってくれていた。

「ツッコミなしかよ・・・ホントにどうした?」

「いや、別に特に何かあったってわけじゃないんだが」

「嘘つけ、メッチャ元気ないじゃないか」

「俺、そんなに元気ないか?」

「ないね。例えるなら、ギャルゲの元気っ子がふさぎ込んだときくらい元気ないね」

「・・・よくわからん」

俺は今一度ため息をついた。

「そういや、元気がないといえば葉月もだな」

「・・・」



あれから一週間がたったが、あの日以来葉月は変わった。・・・いや、変わったというのはちょっと変か?部活の連中とはいつも通りに話しているんだが、俺が話かけると途端に何かしらの理由をつけて逃げてしまう。おちおち話すらろくに出来ない状態が続いていた。



「最近の葉月、何か悩んでいるようにも見えるな」

その龍二の言葉に俺は思わず、えっ?と返していた。

「反応するってことは、あながち関連がないわけでもなさそうだな」

「・・・」

その通りだ。

葉月の様子がおかしくなったのは、あの日の図書館での出来事以降。

それにあの時の俺に対する態度からしても、明らかに俺と関係してるのだろう。

「アイツさ、人気はあるけど、普段自分から話すような奴じゃないだろ?」俺は龍二の言葉に耳を傾ける。

「なのにここ最近、俺達よりも同じ部活の女子と話してることの方が多い。さらに言えば、お前を明らさまに避けてるよな」

「つまりさ、アイツ、何かを紛らわせるかのように、無理してああしてるんじゃないかって思うんだよ」

・・・確かに、ここ最近の葉月は俺達以外の皆ともかなり話をするようになった。

だが俺はそのことを嬉しいとしか考えてなかった。

その向こうにある葉月の想いまで見ていなかったのかもしれない。

「龍二、おまえ凄えよ」

「は?いや、今のはあくまで俺の勘だぜ!?そんな真剣に受け取らなくても・・・」

「いや、その通りだと思う。サンキュな、龍二」龍二はよくわからんが頑張れよと俺の背中をバシバシ叩いて教室を出ていった。

俺は窓を開けて、夕焼けの茜空を見上げた。

葉月の気持ちが俺と同じなら、アイツが抱える悩みは一つしかない。

もしそうなら、俺はまず奏と話さなくちゃいけない。


「逃げちゃ、ダメだよ」


あの日の夜、奏に言われた言葉を思い出す。

そうだ。俺達のためにも、俺はここで答えをはっきりと示す!

そう決意して、ふと校門を見下ろすと、葉月がこっちを見ていた。

俺が見ていることに気づくと、踵を返して立ち去ってしまった。

遠くからだからどんな顔をしているかはわからなかったが、俺には何故か、泣いているように見えた。

すぐにでも追いかけたかったが、今追いかけても何も解決しない。

(俺は、お前が好きなんだからな、葉月!)

俺は叫びたい声をぐっと我慢して、一人帰路についた。




「・・・そっか」

俺は全てを話した。

葉月が俺を避けていること、その原因が俺にあること、そして、葉月を好きだということ・・・。

「お兄ちゃん、変なとこでマジメだよね。このこと、私に言う必要なんてなかったのに・・・」

「そうかもな・・・でも、俺のことをこんなに考えてくれて、好きでいてくれた奏には、話さなくちゃいけないって思ったんだよ」

その言葉に奏は、困ったように微笑んだ。

「お兄ちゃんはあの時、私を大事な妹だと言ってくれた。・・・それは私も同じ、お兄ちゃんは私の大事なお兄ちゃんだよ。・・・だ、だから、お兄ちゃんが幸せになってくれたら、私も嬉しい、か・・・ら・・っ」

奏の顔が、徐々に涙に濡れていく。

「・・・あ」

俺は奏を優しく抱きしめる。

「お、にい・・・ちゃん?」

「泣いている妹を、放っておく兄はいないだろう?」

そう優しく答えると、奏は我慢せず、声をあげて俺の腕の中で泣いた。



しばらく奏の頭を撫でながら考える。

(問題は、アイツが俺に会ってくれるかということだけど・・・)

「・・・よし!」

俺が意気込んだ瞬間、奏が俺から離れた。

「奏、今から葉月ん家に行ってくる」

「え・・・でも今からって、夜だよ?」

「昼間じゃアイツ、会ってくれそうにないからな。それに、今なら絶対家にいるだろうからな」

そう言ってリビングから出ようとすると、

「待って!」

後ろから奏が呼び止めてきた。

「さっきの言葉、少し訂正させて。私、今でもお兄ちゃんのこと、好きだよ」

そして奏は、俺の思いも寄らなかった言葉を告げた。



「私が行く!!」

そう告げた奏の顔に弱さなどはなく、これまで見てきたどんな姿よりも力強く、そして頼もしく見えた。

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