✣プロローグ 淑女の嗜みはハンカチを持つこと
現代を生きる“私”は、見事な社畜戦士だった。
家と会社を往復するだけの毎日。
今日も後輩のミスを押し付けられ(何回目やねん、それ)
後輩がデートに向かうキャピキャピな背中を死んだ目で見送った。
終電ギリギリでやっと帰宅して、お疲れ様な一杯を喉に流し込む。
スマホを開けば、『誕生日おめでとう』の文字。
……でも、それは機械的な通知だけ。
祝ってくれる素敵なダーリン(あっ、後輩の口癖が?!)
彼氏はいないし……。
家族も、もういない。
先月、母が亡くなった。
テーブルに飾る笑顔の母を見てちょっと潤む。
「独りが何よ!独身貴族なめんなっ!」
そう強がって、いつも通りのルーティン お風呂に入る。
ラブラブ恋愛Web小説を読みながら、うふふって現実逃避。
ニヤニヤしてたら、母が気持ち悪いってゴミを見るような冷たい目して見下ろされてたっけ。
「お風呂で、………寝たら、アカン、で……」
そう、母の口癖をブツブツ口にしたら────
うん。そしたらね、意識が、飛んだのよ。
***
瞼が重い。
なんか、鼻に通るこの良い香りはなんですか?
んームスクですかね
あと感じる人の温もり……
瞼をこじ開ける。
はーい。私、思考停止。
そこにいたのは。
視界いっぱいの────
超絶イケメンくんのドアップでした!
ついでた言葉は、
「……がん、ぷ、く…………」
あー待って私の瞼ちゃん。
閉じる前にまたイケメンをチラ見。
私の言葉が分からず、キョトン顔。
(あ──ダメ。無理、尊い)
もうね、心臓が痛い。ドキドキうるさい!
そんなこんなで、残酷な神様のイタズラか、
また意識が遠のく……
遠くの方で、
やたらいい声が聞こえた気がしたような──
(ああ、最高……)
お母さん……ごめんなさい。
私はもう“ヘブン"へ辿り着きました。
今年の誕プレは過去イチ、最高でした。
────誰か、
私のヨダレを拭いてくれ……ませんか?




