のんびり好きな事してたら良い感じに成り上がり?
半年前のことである。
アメリアは、アルフレッドと顔を合わせないまま数ヶ月が過ぎていることに気づいた。
婚約が整った後数回の顔合わせでは、好みど真ん中のイケメン紳士との顔合わせに人並みにドギマギして顔を赤らめたりしてみた。
しかし元の資質が恋愛脳では出来ていないアメリアである。
会えない時間が愛育てるのさ、などと思う事もなく、お互い自分の生活に忙しいから仕方ないわね。と己の趣味に邁進しております気づけば、それなりな収入を得られる立場になっていた。
そして、思い出したのだ。あっ、婚約者いるんだったわ、と。
その頃、ちょうど自身のミサンガ熱も冷めつつあり、最後にいっちょ作ったるか!とアルフレッドへミサンガを編み、近況と共に手紙を送った。
すると、すぐに返信と共に、可愛らしい花が1輪。
気の利いたプレゼントではないことへの謝罪があったが、何か返そうと思う気持ちだけでアメリアは胸が温かくなった。
せっかく貰った花なのだ、押し花にでもしようかな、と思案している時に思い出したのだ。
ハーバリウムなら、長く楽しめそうだと。
さっそく貰った花をドライフラワーにすべく、庭におり、ついでに庭師と共に季節の花を選んだ。
たしか、使うオイルはミネラルオイルだったが…前世では市販品のオイルを買っていたので、何が適切かわからない。
ベビーオイルもミネラルオイルだったかも?と思案していると、ちょうどダンバイン商会の商人が訪ねてきたので、子供用の保湿オイルやオイルマッサージなどに使うオイルは無いかと尋ねると、いくつか用意してくれた。
ついでに可愛らしい小瓶を商人からいくつか買い取り、花から水分が抜けきった頃にボトルへと詰めた。
アルフレッドから貰った花で失敗したくはなかったので、庭師と選んだ季節の花で数種類のオイルと共に制作した。
基本的に怠け者なのに、好きな事やしたい事でトライアンドエラーを繰り返すのは楽しいと感じるのだから不思議なものだ。
結果、オイルによっては時間と共に白濁したり、花の色が抜けてしまうなどあったが、1つのオイルは時間が立っても美しさを保っていた。
そのオイルと丁度一本花が入る程度の細長い小瓶にアルフレッドからの花を入れオイルを満たし、アメリアの納得するハーバリウムが完成したのだった。
実験の末、成功した庭の花のハーバリウムも大変美しく出来たので、応接室の一角に飾ることにした。
また、母も部屋に欲しいと言うので共に花と瓶を選び製作すると、大変喜んでくれたので、アメリアは大満足であった。
その後、商会の商人が訪れた時に色々用意してもらった話の流れで、応接室の一角を飾るハーバリウムを、こんなんできました、とばかりに見せると、商人は目の色を変えた。
そして、あれよあれよと言う間に特許申請、販売許可使用料として、月々のお小遣いとしては破格の額がアメリアの手元にやってきた。
またある時期は、お菓子作りがマイブームとなり、連日キッチンへ押しかけ料理人達の邪魔をしていた。
お菓子作りはしたいが、細かい分量まではさすがに覚えておらず、スイーツ専門で雇われている女性料理人に教えて貰いながらクッキーやケーキを作って楽しんでいた時、ふと思った。
プリンケーキ、食べたいなぁ、と。
ケーキもプリンもある。でもプリンケーキはこの世界にはないのだ。
前世で母がよく作ってくれた思い出が蘇った。
市販のものより少し多めに入ったカラメルがスポンジに染み込んでしっとりと甘くなった生地の上にプルンとくっついて蒸し焼きにされたプリン、あれが食べたいなぁ、と。
前世では幼い頃に母が手作りしてくれた記憶はあるのだが、自分ではどうだっただろう…。
分量はうろ覚えだが、確かなことが1つ。
プリン液の上にスポンジ液を流し込みオーブンで蒸し焼きにする、と言うこと。
そうやって作りたいと言うと総料理長や料理人達は笑った。
そんな作り方をすれば、プリン液とスポンジ液が混ざり合って変な焼き上がりになるぞと。
しかし、ずっと一緒にスイーツ作りをしていた女性料理人は笑わなかった。
やった事はないが、出来るかもしれない。やりましょうと。
プリン液の分量もスポンジ生地の分量も、自分は分かりますから、と。
私の中にあるうろ覚えのレシピ。
まずはカラメル液を容器に入れる、そしてプリン液、スポンジ生地、蒸し焼き、ひっくり返して器から出すと、カラメル液がトロリとスポンジへ流れてフワフワのスポンジをしっとりと甘くするのだ。
そう伝えて、1人用サイズの容器にプリン液とスポンジ生地の比率を変えた物をいくつか作る。プリン液の中まで火が通るようにじっくりオーブンへ入れるが、一番上の生地が焦げない様に途中でアルミを被せて…
そうして焼き上がったプリンケーキ達は、生地とプリン液が混ざることなく焼き上がっているように見える。
ひっくり返してみると、いくつかはプリン液の量が多すぎて形を保てず崩れ、いくつかはスポンジ生地が多すぎて味気なく感じ。しかし、いくつかは生地とプリンの比率が理想的で、カラメルが生地に丁度馴染み、絶品スイーツとして焼き上がった。
さっそく、午後のティータイムで母とちょうど遊びに来ていた母の友人に振る舞うと、大絶賛され、美食家であった母の友人の勧めでレシピを特許申請し(食べ物のレシピにもあったのかと驚いた)、友人の旦那様が出資するからスイーツ店を開かないかと提案され、なんだか分からないうちに、カフェの経営者になっていた。
スイーツ店の総料理長として、ずっと一緒にスイーツ作りをしていた女性料理人を抜擢すると、彼女はメキメキ才能を伸ばし、いつの間にやら大人気スイーツ店になっていた。
こうして運よく立て続けに私の下手の横好きアイデアが形となり、不労所得(?)として月々なかなかの額がアメリアの口座へと振り込まれていった。




