アメリアは怠けたいけど、趣味とかは堪能したい
前世のアメリアは独身時代、多趣味と言えば聞こえは良いが、要するに下手の横好きであった。
基本的にインドア派であった前世のアメリアの趣味は、主に手芸や読書お菓子づくり、時にはネットで調べて化粧水なども手作りしてみたり。
いわゆる“ていねいな暮らし”に憧れて、手作り◯◯に手を出しては1、2回作って満足し、数年後に思い立ってまた手作り◯◯に挑戦する。
多趣味ゆえ、数個の趣味を繰り返しループするのはある意味エコだったと自負している。
それも全て、結婚して子供が生まれてからは全て忙殺され“子供が大きくなれば”などと思っているうちに人生を終えたのだろう。
消化不良を現世まで引きずっている感がある。
なので、アメリアも細やかな手仕事などは割と嫌いではないし、数種類のハーブを育てポプリやオリジナルハーブティーなどを嗜んだりもする。
前世では時には、ていねいな暮らし(笑)
などと小馬鹿にされた行為も今世では、淑やかなご令嬢ですね、になるので、アメリアは今世では多趣味な下手の横好きを謳歌している。
チクチクと刺繍を進めていた手を止め、ふぅと息を吐いた。
根を詰めすぎると肩がこる。
この辺でやめておこう。
ググッと伸びをすると、背中がパキパキと音を立てて血液が巡ってゆく。
少し庭園を散歩しながら、お花でも愛でようかな〜
なんて優雅な生活!これが伯爵令嬢!
などと思いながら庭に出る。
アルフレッド様との顔合わせ後、にわかにレクリア邸は慌ただしい空気感を纏っていた。
公爵様が改めて当主で話し合いを、と連絡をしてきたのだ。
そして、当主同士の話し合いの結果。
アルフレッドとアメリアの婚約が整った。
アルフレッドは公爵家後継を降り、今後は騎士として立身するが、伯爵令嬢であるアメリアと身分的な釣り合いを取るため、公爵家の所有するランド子爵位を受け継ぐ事になった。
必然的にアメリアは子爵夫人になるが、今まで公爵家が有していた領地のない名ばかりの子爵位。
子爵としての領地収入もないので、アルフレッドの騎士として収入で生活していくことになる。
が、アメリアにとっては特に問題はなかった。
アメリアが重視するのは、面倒な貴族のしがらみのない3食昼寝付きのグータラ生活なのだ。
それに、アメリアには思わぬ副収入があった。
「アメリア様。ダンバイン商会の方がいらっしゃいました」
「わかったわ、すぐ行きます」
応接間でダンバイン商会の人と打ち合わせをする。
「では、この編み込み方の特許料と独占使用許可として、年間この額でいかがてすか?」
「まぁ…こんなによろしいの?」
「もちろんです!その代わりといっては何ですか、今後も新たなデザインがございましたら…」
「えぇ、もちろん。ダンバイン商会へ独占使用許可を許します」
「ありがとうございます!では、今日の所はこの辺で…お時間ありがとうございました」
商会の方を見送り、私は前世の知識で無双するなろう主人公の気分を味わっていた。
といっても、私が前世の知識で広めたものは大した物ではない。
半端な長さの刺繍糸を見て思いついたのだ。
そういえば前世では我が娘が小学生の頃に、ミサンガが流行ったなぁ?と。
独身時代に培った下手の横好きグッズから刺繍糸を取り出し、夜な夜な動画サイトを漁って数々のデザインのミサンガを子供に編んであげた。
それを着けた我が子を見て、学校内という小さな括りで一時期流行を生み出したのだ。
そんな事を思い出し、余った色とりどりの刺繍糸で
1つのデザインで編み上げたミサンガを侍女達に見せると、とても褒められたので気分が良くなり様々な編み方で編み配りまくった。
時には数人の侍女に編み方を教えながら編んでいると、屋敷中の働く女性の手首にミサンガが付いているのが当たり前になり、やがて買い出しをする使用人から下町へと話題が広がり…
ある日噂を聞きつけたダンバイン商会へと話が繋がったのだ。
編み方を知っているのは私と侍女数人。
特に複雑ではない編み方の為、特許など発想もしなかったが、商会の方に促され特許を申請すると、使用料なる収入を得られる様になり、さらには少し複雑な編み方を商会での独占使用許可でさらに収入は上乗せに…
好きな事して小金も稼げて気分はウハウハである。
トレンドを生み出したのだと言っても下町での平民の話なので社交界では話題にもならない。
特に目立ちたくもないので、大満足である。
「アメリアちゃんに、こんな才能があったなんて…パパは感動だよ」
商会の方との面談後に父にミサンガで得られた収入と今後も引き続き収入が見込めそうだと話をすると、父は目を潤ませて感動していた。
「そうね、アルフレッド様と結婚をしても騎士様のお給料では贅沢できないもの。自分に安定した収入があるのは安心よね」
現実的な母は、後継を降りたアルフレッド様との結婚に難色を示していたが、アメリア自身が経済的自立を果たした後は態度を軟化させていた。
高位貴族に嫁ぎ、華やかな社交の場で活躍するのが女の幸せと信じる貴族女性として、最大限の譲歩だったのだろう。
別に、お金を稼ごうとかは特に考えていなかったが、良い感じに受け取ってくれている両親に余計なことは言わずにアメリアはにこやかな笑顔を返した。




