1話
初投稿です。
少しずつ進めて行こうと思います。
魔法少女達の物語です。
「痛っ」
午後の気だるさが漂う昼終わりの授業中、手慰みに触っていた机の縁。どうやら古かったのか、はたまた処理が甘かったのか。─ひと言で言ってしまえば棘が刺さったのだ。
一度刺さったことに気がついてしまえば、気になって仕方がない。どうにか抜こうと爪を立てて格闘してみるも空しく、余計深くに刺さり痛みが増すだけだった。患部の熱は増して、目には雫が浮かびだす。
授業中の静かな孤立無援の戦いに援軍が現れたのはすぐだった。
「アオ、どしたの?」
隣の席の幼馴染が流石に様子のおかしさに気がついて声をかけてくれたのだ。
「トゲが刺さって抜けないの」
「なんだぁ、そんなことかぁ」
なんてことないかのように彼女は笑う。
「結構、痛いよ」
「痛いよねー」
アピールも気にも留めず、リカは自分の机を漁り続ける。
「あったあった。ほら、手ぇ貸して」
大人しく手を差し出すと、彼女はセロハンテープを私の手の患部に貼り付けて剥がした。
写し取られた手の模様に混じってトゲも取られる。
「わっ、ありがとう」
幾ばくか痛みが少なくなった手を擦りながら礼を告げる。
「えへ、どういたしまして。困ってるなら言ってよホントに。」
「リカに頼ってばかりじゃ、いらんないよ。」
「別にいいのに…」
リカはそう、いつだってそう。いつも隣に居て、鈍臭くて鈍くてノロマな私を助けてくれる。
「アオ、授業終わったら遊びいこ!新作のフラペ飲みたいの」
もちろん、と答えようとして口を動かす前に教師の視線を感じた私は首を小さく縦に振ることしかできなかった。
長い長い、長いだけで一片たりとも興味の持てない授業が終わり放課後がやってきた。
放課後の楽しみ浮き足立ちざわめく教室を私達は足早に出発し街へ出掛ける。
私はリカぐらいしか友達が居ない、オシャレだって気にはしない、趣味だってめぼしい物があるわけでもない。
つまり、リカに連れられなければ街で遊ぶようなことはしないし、こんな新作のフラペチーノを飲むようなこともしない。
「美味しいね」
「前回のも美味しかったけど、今回のは濃厚で結構好みかな」
「うん、私も」
「この前に私が見繕ったシャドウ使ってみた?」
「あー…えへへ、まだ使ってない…」
「んもぅ、ちゃんと使いなよ〜、きっともっと可愛いよ」
そう言って頬をぷくりと膨らますリカは友人の贔屓目を抜いたって可愛い。きっと私がメイクをしたってかなうまい。
そんな劣等感を覆い隠すように私は顔に笑みを浮かべる。
「私にはちょっと難しそう。できるかな…?」
「できる、できる」
それでも私はリカとのこの他愛ない会話の時間が好きだ。ちょっとだけ年相応の女の子になれているような気がする。
「そういえばさー、この動画見た?」
「なぁに?たぶん見てないよ」
リカがそう言って見せてきたSNSに誰かが投稿した動画には魔法少女が戦う姿が収められていた。
「魔法少女じゃん」
「うん、かっこいいよね」
「これ、ここの近くじゃない?魔物出たの?」
動画には確かにこの近くの風景が写し取られている。魔物はどこにいつ現れるか予想できない災害のようなものだ。
「そうなの!だから怖くって!」
「えー…じゃぁなんで今日ここ来たの?別のとこでもよかったじゃん」
「あー、ちょっと、野次馬したくて…」
途端にもじもじしだすリカに私は笑みを浮かべる。
ふーん
「ふっ、魔法少女が好きで見てみたいんでしょ」
「…うん。魔物が出たのは昨日だけど、今日なら事後処理に来てるかもって」
「魔法少女になりたいの?」
「うん!なりたい!…でも全然なれないから私には才能ないのかもね。」
眩しい。そう思った。夢を持っている彼女の目も話も憧れも全部私には眩しい。
魔法少女には強い思いと才能があれば誰でも成れるらしい。変身して政府に登録すれば報酬も貰える。一種の職業だ。
「リカならきっといつかなれるよ」
「ほんとう?」
「うん」
その後も続くとりとめのない雑談が続き、真上にあった日は傾き空は赤く夕焼けを映し出した。
そろそろ帰ろうかと、2人で席を立つ。ドリンク1杯でずいぶんと長居してしまった。
「昨日の現場見てから帰る?」
「うん、アオが大丈夫なら行きたいな」
「じゃぁ、行こう!」
店のドアに手をかけて押した瞬間。
─振動、爆発音。
反射で閉じた目を開けると、人々が逃げ惑っている。
「…なに」
何も理解できなくて思わず声がこぼれ落ちる。
「魔物だ…」
一歩早く現実を理解したリカが私の腕をつかむ。
リカの視線の先には蠢く形容しがたい生物が居た。
「どうしよう、魔法少女は?逃げなきゃ。」
振り向いてリカを見る。リカは怯える私をよそに真っ直ぐ魔物を見つめて居た。
唇がゆっくりと動き言葉を紡ぐ。
「チャンスだ。大丈夫。助けるの。私はなるの魔法少女に。」
怖いと思った。怯えずに真っ直ぐ前を見る目が。怯えて逃げることしか考えられない私と、夢を追って人を助けようとするリカとの差が。
足が震えてる。手が震えてる。視線が定まらない。そうだ、私怖いんだ、リカに置いていかれるのが。
─魔法少女に必要なのは強い思いと才能。
リカが手を空に掲げる。
突如として風と共に眩い光に包まれる。鼻腔を一瞬、夏の匂いが掠めた。
目を開けると魔法少女が立っていた。
「リカ、戦うの…?」
「うん、私は戦う。助けるの。」
リカの手を握る。大丈夫。
「ちょっとだけ勇気をちょうだい。」
胸に手をあて念じる。
私だって戦いたい。置いてかれたくない。リカの側に居ていい理由が欲しい。
風が吹く。眩い光に包まれる。身体の中を何かが吹き荒れる感覚。
目を開くとリカが呆然と私を見つめて居た。
「私も戦うよ。」
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