四寸先は希望…?
鉛のような足でなんとか外に出た。
しかし、校庭には誰もいなかった。
あれ?みんなどこへ行ったんだろう。
どこか安全な場所へ避難しているのかな…。
広い校庭に一人だけポツンと取り残されているその状況はまるで私には味方がいない、ひとりぼっちと思わせるのに十分だった。
私の学校なんて、校庭なんて、世界の中の面積の0.0000001%にも満たない。だが、世界には私しかいない、そう感じられた。
冷たい風が私の頬を掠め
「君はひとりぼっち」
そう伝えてきたような気がした。
冷静になるとあることに気がついた。それは不安な気持ちの中にある一筋の光のように思えた。人は誰もいないけど先生や、かなのようにおかしくなってしまった人もいない。
「もしかしたらここが一番安全かも。」
私はそう呟いた。
張り詰めていた緊張が緩み、足に力が入らなくなりその場に座り込んでしまった。
何があったかは分からないけど、とりあえずここで、なのを待とう。話はそれからだ。
さっきは一番安全かもと思ったが、誰もいないことで誰とも話せない不安からさらに恐怖心が大きくなる。下を向き、気を紛らわすために校庭の砂に手や木の棒で絵を描く。
「キャーーーーーーーー」
どこからか叫び声が聞こえた。その声に反応したかのように鳥たちが木々から離れて別の場所へ飛んでいく。
私一人だけの校庭には誰かの叫び声と、鳥たちの飛ぶ音だけが響き渡っていた。
何かあったのだろう。そしてそれはおそらく先生やかなとその状態と関係しているのであろう。
助けなければ…。足を進めなければ…。
立っているだけでは何も変わらないことは分かってはいるが、先程の先生とかなを目の当たりにして叫び声の主の元へ行くのは容易なことではなかった。
何もできずに下を向き沈黙すること数十秒…。
叫び声は聞こえなくなった。その代わりに、
「ぐちゃぐちゃ。バリボリ。」
といった不吉な音が聞こえた。
私は今の状況に確信をしているわけではないが、ホラー漫画を思い出した。
私はヒーロー!悪い人を倒すの。
私もヒーロー。俺も!
そう言ってみんな殺されてしまった。
あれは何の漫画だったっけ?
ゾンビだ。
背筋が凍りつくように冷たい風が吹いてきた。
なんでバリボリといった音でホラー漫画を思い出すのだろう…。他にもたくさん音はある。
などそんなことを考えても意味なんてないと分かっているのに現実から目を逸らしてしまう。
しかし目を逸らしたところで不安感が晴れることも心のわだかまりが楽になるわけでもなかった。