三寸先は絶望
なのが私をおぶって校内を走り階段を下っている。私は辺りを見回すとたくさんの血がついていることに気がついた。
これは何の血だろう。
もしかしたら先生の血かな。
誰かが逃げ遅れたのかな。
不安で不安で心臓が押しつぶされそうになる。
それと同時に、さっきなのが言っていた
「かなは人間じゃない」
ってどういうことだろうと頭がぐるぐるする。
考えなきゃいけない…。考えなきゃいけないのに、私の身体が、思考が考えることを拒否する。
朝は、起きたときは、いつもと変わらない1日だったのにな…。
考えてもどうしょうもないことばかりで頭を埋め尽くされる。
現実に目を向けられない自分が嫌でたまらなくなって自己嫌悪に陥る。
「あいか。きっと大丈夫。」
私の不安な気持ちを察してか、なのが優しく声をかけてくれた。なのはいつも誰にでも優しい。今だってそうだ。自分が一番怖いはずなのに…。
「なの。ごめんね。」
私は一言そう呟くことしかできなかった。蚊の飛ぶように小さなその声は近くにいる、なのにすら届くことはなかった。
太陽の光が差してきた。もうすぐ外に出ることができる。一階への階段を下ってる最中一安心していた私たち。その横をすごいスピードで『のか』が横切る。
「のか。そっちは危ない。かなが噛まれた。」
「噛まれたってどういうこと!?それじゃあもう、かなは助からないじゃない!」
なのとのかが口論になってしまった。
噛まれたって何?助からないって何?
私は二人の口論が耳に入ってこなかった。私だけ別世界にいるかのような感覚になった。
「私はかなを助けに行く。」
そう言ってのかはかなのいる3階の教室へ行くために階段を駆け上がっていった。
「本当に…。のかはかなが大好きだよね。私も助けに行くか…。後で、また後で、すべて話すからあいかは先に校庭にいて。」
なのはそう言い私を昇降口の前におろし、のかに続いてかなのもとに行ってしまった。
かなとのかは双子でいつも仲良しだったから片方のピンチとなったらそれはかけつけるよね。
あんなに大好きな友達なのに、私の足は鉛のように重く動かなかった。
あの時私もついて行っていたら未来は変わっていたのだろうか。
あの時私が二人を止めていたら未来は変わっていたのだろうか。