二寸先は闇黒
「かな!助けに来たよ。」
私はそう叫びかながいる教室の中に後ろの扉から入った。さっきまでは恐怖で支配されていた体が今は簡単に動く。それくらいわたしにとってかなは大切な友達なのだと再認識する。
「かな怖かったよね。辛かったよね。もう私がいるから大丈夫だよ。」
と、かなに伝えた。しかし、かなの表情は強張っていて何も言わなかった。かなの手は震え、血がたくさんついていた。
先生はこれほどまでに暴れたのだということを知り、かなももちろんだが、先生のことも心配になった。
遠くからパタパタと上履きの音が聞こえる。逃げ遅れた人でもいるのだろうか。しかし、その足音は私たちの教室の前でパタリとやんだ。今この惨劇なのにわざわざ戻ってくる人はいないはず。考えれば考えるほどさらに恐怖に包まれた。
「あいか!今すぐかなから離…。」
この声はクラスメートの『なの』だ。しかし、最後の言葉が聞き取れなかった。大方早く逃げてと言いたかったのであろう。周りの状況からも相当危険なのだと感じ、慌ててかなの肩を支え一緒に連れて行こうとした。
しかし、無情にもかなは私の手を振り払った。そのまま座り込んでしまう。
「かな。どうしたの?具合悪い?早く逃げないと!」
私も座り込み目線を合わせて話しかける。
教室に私が来たときからずっと目を瞑っていたかなが目を開けた。
私は驚きと恐怖で何も声が出なくなってしまった。
目が白い。どういうこと。かなに何かあったの?訳が分からない。
バンと音を立てて先程叫び声をあげていたなのが教室に入ってきた。
「あいか!早くして。かなをおいて逃げるのよ。」
「なんで?私の友達だよ。置いて逃げることなんてできない。」
「理由は後で話すから。早くして!かなはもう人間じゃない。」
言われている意味が分からなかった。今度は恐怖ではなく、思考が停止して足が動かなくなった。
そんな私の様子を見かねてか、なのが私をおぶって一緒に逃げてくれた。